業務内容詳細
建設コンサルタント部門
地すべり対策
地すべりの誘因は、地下水位の上昇、まれに人為的活動による斜面の改変などが挙げられます。このため、地すべり対策工法としては、「抑制工」と呼ばれる地下水を排除する「地下水排除工法」、動こうとする斜面末端に土を盛ったり地すべり頭部の土を除去したりする「斜面改良工」などが行われます。また、地すべりの滑動を構造物の機能を利用して停止させる「抑止工」と呼ばれる工法があります。抑止工には、地中に鋼管杭(鉄の管)を敷設したり、ワイヤーを束ねたアンカーというもので不動地盤と地表面を固定する工法などがあります。
水抜きボーリング工
地すべりの地下水位を排除する目的で40㎜程度の穴の開いたパイプを地中に挿入したものです。通常は、扇状に配置することが多く、その延長は長いものでも80m程度までです。土地の制約などによって、100mを超える水抜きボーリングの事例もあります。
集水井工
直径3.5m前後の竪坑を5~40m程度掘削し、井戸の中から横ボーリングを行ったものを集水井と呼びます。通常、集水井はすべり面を貫かないように移動土塊内に設置することが多いですが、まれに井戸工事中に井筒が地すべりの挙動によって変形するということもあります。
排水トンネル工
直径2m程度のトンネルを地すべり地外から地すべりの背面に向けて掘削し、そこからすべり面付近に作用する地下水位を水抜きボーリングによって排除するものです。かなり、大規模な工事ですが、その他の工法も採用しにくいような大規模な地すべり対策として計画されることが多いです。
アンカー工
地すべりの滑動を、構造物の機能によって停止させるもので、地中にPC鋼より線を設置するものです。急峻な斜面での採用事例が多く、地表面に不陸が大きい場合には、配置計画が難しくなります。高速道路の切土斜面などでもよくみられる構造物です。
鋼管杭工
アンカー工同様、地すべりの滑動を構造物の機能によって停止させるものです。杭工の場合には、直径200~1000㎜(超えるものもある)の鋼管杭を移動土塊に貫き不動地盤に挿入します。完成後には、地表面にほとんど跡が残らないため、その存在自体が認識できなくなります。杭工と類似した深礎杭工というものも存在します(直径が数mを超えるもの)。深礎杭では、鋼管杭で停止できないような規模の大きな地すべりの対策で採用されます。
貯水池内対策
ダム湖などの貯水池内地すべり対策は、前述の抑制工、抑止工なども行われますが、大規模な押え盛土工法なども採用されます。水を溜める施設の中に盛土をするのですから、様々な協議が必要となります。
鉄筋挿入工
比較的表層の崩壊対策として計画されます。通常は、2~5m程度の長さの鉄筋を地中に1.2~2.0m程度のピッチで打設します。地表には、格子状のコンクリート(吹付枠工)などが配置される場合があります。また、崩壊の防止対策として導入する場合も多く、完成後には緑化によって周辺環境と調和せることが多いです。
落石発生源対策
落石発生源対策とは、落石がある場所を対策することによって落石を発生させないようにするものです。工法としては、金網、ワイヤーロープなどを斜面に配置するもの、吹付枠工やアンカー工などで斜面を固定するもの、割れ目をモルタルや特殊な接着剤で固定するもの、切土して除去するものなどがあります。
落石防護対策
落石防護工とは、斜面上部から落下した落石を施設によって受け止めるものです。こちらも、落石防護工としても多数存在しますが、細かい石を金網で受け止めるもの、大きなものでも高強度金網で受け止めるもの、落石防護柵、防護フェンス、落石防護土堤、ロックシェッドなどが存在します。落石対策は、発生源対策と防護工対策の両者を検討し、優位なものを採用します。
地質調査部門
地質平面図の作成
地質調査は、どのような構造物を作ろうとするときでも必要とされる業務です。まず業務の開始段階では、文献などの調査を行います。次に、その文献などを参考に、構造物を計画している地点を含む広範囲の地表踏査(現地調査)を行います。構造物の計画地点のみでは、どのような地質が出現するのか、問題を引き起こすような脆弱層、断層、突発湧水などが推定できませんので、広範囲を調査します。トンネルなどの調査では、地下構造を把握するために、計画地点より離れた渓流部などの露頭(地表に現れた地層)調査を行います。
その結果、地質平面図を作成し、構造物計画地点に出現する地層とその地層の問題点などを抽出します。
基礎岩盤の観察
写真は、ダム工事中の現場です。
ダムには、コンクリートで作る重力式ダム他や土、石で作るロックフィルダムなどがあります。高さが15mを超えるダムは、工事段階で厳しい岩盤検査を受けなければなりません。その過程で、基礎岩盤がどのような地質であるのか、どれくらいの硬さや割れ目の間隔、割れ目間の挟在物の有無などから評価した岩盤等級区分図などを作成します。これらの地質平面図、岩級区分図、岩盤の評価などを踏まえて岩盤の検査に臨みます。不合格となる場合は、不良岩盤を除去するなどの対応をし、検査結果の合格が出るまで望みます。
ボーリング調査
構造物の建設前では、ボーリング調査を行います。地質状況や岩盤状況、透水性などを把握することを目的とします。ボーリング調査は、点のデータですので、地表踏査や弾性波探査と呼ばれる物理探査方法などと併用し、より確からしい地質情報を取りまとめていきます。しかし、どうしてもわからないような現象が生じた場合には、調査ボーリングを追加したり、直径2m程度のトンネル(調査横坑)を掘削して岩盤を直接確認したりすることもあります。
地質解析
調査ボーリング、踏査結果、弾性波探査などの調査成果を取りまとめ、地質断面図、岩級区分図、ルジオンマップ(透水性区分図)などを作成します。この作成した地質断面図などに基づき、構造物の設計、工事計画(工法の選定、数量計算、施工方法)などが立案されます。また、工事中などにも調査密度の増加に伴って地質平面図、断面図などが修正されていきます。
空中写真判読
空中写真判読の一例として四国の写真を添付しました。写真の中央付近に東西に連続する直線状の筋がみえます。これが有名な中央構造線です。実際の空中写真判読では、もっと拡大した大きなスケールで1万年以降の段丘面などにずれが無いか。河川が不自然な形に曲がっていないかなどを判読します。この結果、断層の可能性がある地形を抽出することもあります。
地すべり調査
写真は、平成20年の岩手宮城内陸地震で発生した荒砥沢地すべりです。この地すべりは、幅0.9㎞、長さ1.3㎞もある巨大な地すべりで日本中に衝撃を与えました。この地すべりの規模を表現するために、東京の渋谷駅周辺に荒砥沢地すべりの範囲をトレースしてみました。これをみると、荒砥沢地すべりがいかに大規模であったが判ると思います。
地すべりは、豪雨、融雪水などによって地下水位が上昇するために発生することが多く、一般的にはその活動速度はゆっくりした速度で移動します。
地すべりの調査では、地表面の亀裂、段差などの地すべりの兆候を発見し、その範囲などを特定します。次に、地下深部の情報を得るために、調査ボーリング、弾性波探査を実施し、地質状況、移動土塊の規模、すべり面情報、地下水状況などを把握します。また、ボーリング調査を行った調査孔は、観測計器を設置して変位状況、すべり面深度などを計測することも多いです。
崩壊調査
写真は、平成23年の紀伊半島豪雨で発生した崩壊現場です。このような崩壊は、「深層崩壊」と呼ばれる事例です。
一般的な崩壊は、斜面勾配が30°以上で発生する表層数m程度のものを主体とします。発生誘因は、重力性の変位や降雨などによる浸食が多いです。移動速度は地すべりとは異なり、突発的に発生するため、人的被害なども甚大となることが多いのです。このため、「裏山からぱらぱらと小石が落ち始めた」とか「普段はみられない湧水がある」などの現象が確認された場合には危険が迫っている可能性が高いと考えた方がよいかもしれません。
落石調査
落石は、単独で発生するものや斜面の崩壊に伴って発生するものなど、非常に多岐にわたります。このため、対象とする斜面は、どのような状態であるのかを確認する必要があります。
その際には、写真撮影だけでは説明しにくいような場合には、岩塊をスケッチして不安定度を表現します。スケッチは、写真のように1方向だけの観察ではなく、多少色々な方向から見た情報を織り交ぜ、わかりやすく表現します。